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久々にノックアウト

私はかなりの量の本を読んでます。
ただジャンルはかなり偏っており、推理もの、あるいは今学んでいるグリーフケアに関する専門書が多いのですが、先日本屋で目に留まった一冊。
小池真理子さんの<沈黙のひと>という文庫本。
彼女の本は何冊か読んだことありますが、どちらかというと恋愛ものが多くて苦手でした。
ただ、この本は父と娘を描いているとあり手にとってみたのです。

う~ん、読み進むほどに数年前の介護の頃がよみがえります。
そして次の一節で完全にノックアウトされました。
引用します。
<私は傲慢だった。 自分の人生を生きるだけで必死だった。 流れていく時間の残酷さを知らなかった。
目を向けていたのは、自分の中を流れ、渦を巻く時間についてだけであり、同じ時間が、まるで加速度がついたかのように、老いゆく者の中を流れていることからは、半ば意識的に目をそむけていた。 見ないようにし、考えないようにしてきた。 なんとかなると信じようとし、信じたいあまりに、自分自身をうまくごまかしてきた。
そして気がつくと、父は何も話せなくなっていたのだった。文章にして書くことも、叶わなくなっていたのだった。
私は生まれて初めて.....恥ずかしいことに、五十をすぎてからやっと...自分の父親に真剣なまなざしを向け、見つめ、その人生を自分なりに解釈しようとし始めた時、すでにその人は車椅子の中でうつむき、沈黙していたのであった。>

8年前の私です。 ここまで適格に表現されると何だか不思議なくらい。
一気に読み終えました。
内容は敢えて触れませんが、娘の父親への愛情、後悔、なんとなく心に沁みる本でした。
読みながら涙するなんて久しぶりでした。
亡き父をしみじみ想った一日でした。
by midori_ta | 2015-05-11 18:34

30数年勤めた金融業界から引退し、のんびりライフの日常と想いを綴ります. 写真は先代猫アディーです


by midori_ta