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訃報 佐野洋子さん

以前、このブログでも紹介したことのある絵本作家、エッセイストの佐野洋子さんが亡くなられた。
乳がん患者でもあった彼女は、著書<シズコさん>や<役にたたない日々>の中で、その闘病生活についても幾度が触れていたが、いつも明るくユーモアを忘れない生き方が大好きだった。医者から余命一年と宣告された日に、これでお金を使えるとすぐ外車ジャガーを買いにいく彼女に拍手を送った。

彼女が有名な<百万回いきたねこ>の作者であったこと、谷川俊太郎氏の元妻であったことなどは後で知った。 私が彼女に興味をもったのは<シズコさん>という実母との葛藤を描いた本であった。母を亡くした直後だったこともあり、なんとなく手にして読んだエッセイは、優しくて暖かく母を慕う彼女の想いがストレートに伝わってきた。痴呆症となった母と幼いときから愛されたいと願ってきた娘が、施設で寝たきりの母のベッドで一緒に横になりながら語り合うシーンは胸をうつ。

<私は正気のかあさんを一度も好きじゃなかった。いつも食ってかかり、母はわめいて泣いた。そしてそのたびに後悔した。 かわいそうな母さん。かわいそうな私達。 人生って気が付いた時はいつも間に合わなくなっているのだ。> 

親子の関係は複雑だ。情がからむだけにお互いにわがままになりがち。私も両親の介護を通して、どんどん子供に戻っていく両親を認めたくなく、どうしてもきつくなりがちだった。今思えば、どれほど心細く私を必要としていたのかがわかる。 でももうその親はいない。 どんなに思いを尽くしても、これで十分と思える介護はないだろう。人は老いて、いつかは死んでいく。 生きることも難しいけど、死んでいくのも難しい。 そんな思いをなごませてくれたエッセイが<シズコさん>だった。 

心よりご冥福をお祈りいたします。 天国でシズコさんに会えますように。
by midori_ta | 2010-11-06 06:42 | 医療

30数年勤めた金融業界から引退し、のんびりライフの日常と想いを綴ります. 写真は先代猫アディーです


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